中国でも紅茶の増産が続いている
『中国各地で紅茶ブームが起きています。
これは需要側(消費者側)の要望というよりは、むしろ生産側の都合のようで。』
2010年の世界お茶まつりの国産紅茶のシンポジウムのパネルディスカッションで、
『中国では若者が紅茶に注目をして飲みだしている』
という話をされていました。
紅茶は、元々中国が発祥で、大航海時代にはヨーロッパに向けて大量に輸出されてました。
と書くと語弊はありますが、緑茶と紅茶合わせて『茶』というものが
ヨーロッパでは高級品として扱われ高く珍重されていたので、
大量に買われた嗜好品だったということです。
ただ、その地位は未来永劫続くわけでもなく、イギリスの植民地でのアッサム種による大量増産が始まると中国紅茶にも陰りが見えてきました。
ですが、そのまま手をこまねいているわけでもなく、
今謳われる『世界3大紅茶』の一角『キームン紅茶』が誕生するわけです。
紅茶はその誕生から現在に至るまで、『輸出専用商品』として生産されてきました。
中国のお茶は、知らない方には意外と思われますが、緑茶がメインです。
消費量の7~8割が緑茶で、急須などを使わずにグラスに茶葉を入れて熱湯を注いで飲みます。
中身が足りなくなったら差し湯をして、味や色がなくなるまで飲むというスタイルです。
残りの2割の中に中国の代名詞烏龍茶や紅茶が含まれ、
烏龍茶は中国では実は『愛好家が飲むお茶』として位置づけられているそうです。
(ただ、お店にはペットボトル入りの烏龍茶が普通に売っているそうです。ほとんどが砂糖入りだそうですが)
その中での、紅茶の増産は、ここまでの話で行くと
『中国の若者の紅茶シフトの活発化』と考えるには充分でした。
増産の事情は、消費者ではなく、生産者の事情?
お茶の価格がシーズンによって大幅に下落しているのは、
日本だけの事情ではなく、中国でも同じようです。
ここ数年毎年ある先生のお陰で明前獅峰龍井献上茶をいただくのですが(購入してますよ。最近はブツブツ交換ですが)、明前とはこちらで言う八十八夜のちょっと前で、位置づけ的には『新茶』に値しまして、それが100g1万円が原価というお茶です。
それがほぼ原価ベースで頂点らしいのですが(販売価格は5倍から10倍だそうで)、そこから夏秋茶になると1/30以下まで下落するそうです。
日本でも、品評会用に100g数万の値段がついて1番茶が1kg数万の値段になってから、
一気に1kg300円への急降下が始まります。
こういう急降下の対策のため、まだ流通として成立していない紅茶を作り、
高単価商品として農家の生活の支えにしたいという考えは日中同じようです。
ただ、日本では個人の努力が主で、中国では行政の指導が主のようです。
どちらが良いかということは一概に言えません。
日本では個人の創意工夫で名品が生まれやすい土壌にありますし、
中国ではキームン紅茶などは茶業試験場で生まれた名品です。
各々の国の実情に合わせた良い紅茶が生まれることを願い、
それが市民権を得てまずは生産国その地に文化として根付くことを願いたいものです。