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製造の現状

まずは、必ず言わなくてはいけない大切なことがあります。
『やぶきたは優秀な緑茶の品種です』
それで、なんとかして緑茶以外の選択肢を考えようと言われているのが現状です。
理由は簡単でして、『緑茶が高く売れない』からです。
正確には、『高く買い取ってくれるシーズンに安く買い叩かれる』からとも言えます。
紅茶にするメリットは、まだ大手が入ってないので、大量に作れない・大量に流通してない・基本生産者の言い値で売れる。ということがあります。
僕が懸念している事は、『紅茶とはどういう飲み物か、紙パックかペットボトルぐらいしか知らない』という事にあります。
真面目に研究されている方もいらっしゃいます。
ですが、大半は『酸化発酵すれば紅茶になる』と思ってます。
例えてみれば、『牛乳を腐らせればチーズかヨーグルトになる』と思ってるということです。
そんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、9割ぐらいの国産紅茶の現状です。

紅茶づくりには最低でも『萎凋』と『発酵』というプロセスが必要です。
では、その茶葉におけるベストの萎凋と発酵はどのくらいか。
それを何回も条件分けをして製茶してみないことには、ベストなんてわかりません。
海外の巨大茶園でも年200回~600回と多くの回数製茶をしてベストをさがしてさらに経験値を高めています。
ですが、その検証さえしないまま、『紅茶に向かない品種のお茶』を『紅茶』にしてして販売します。
僕はこの危うさを、感じずにはいられません。
真面目に取り組んでいらっしゃる茶園さんは、やぶきたでも向き合って検証します。個人的には、やぶきたは緑茶にして欲しいのですが、紅茶をなんとか作ってくれます。
僕は、製造の現状として、ちゃんと紅茶を作る事を煎茶並みに徹底してくれれば、少しは変われると思います。
例え、向いていなくても、今手元の資源を最大限活用しないといけないのが、茶園さんに突きつけられた現実でありますから。

やぶきた紅茶の平均

国内で圧倒的多数を占めるやぶきた紅茶の大まかな特徴を書きます。

  • 水色は茶色がかっているが、濁っている
  • 香ばしいが、焦げたような香りがする
  • 渋みがなく甘く感じるが、味に粘性を感じる

悪口を列挙したわけじゃありません。
これらの特徴からかけ離れたやぶきた紅茶もあります。
ですが、大体のやぶきた紅茶はここに着地します。

やぶきた紅茶の未来への提案

上記の特徴に至るまで、色々な原因があると言われていますが、大体このポイントに絞られます。

  • 肥料が過剰である
  • 萎凋が不十分である
  • 発酵が過剰である

煎茶との生産の兼ね合いで、肥料の方は難しいかもしれません。
ですが、農家さんによっては、一番茶以降は紅茶用と割り切って肥料調整をしている所もあります。
肥料が葉に残ると、きれいな発酵を起こさずのどに張り付くような味になると言います。
実際、うまく紅茶を作る茶園さんは、他と比べて圧倒的に肥料の量が少ないです。
(結果、煎茶では評価されてませんが)

萎凋が不十分だと、香りが出ません。
ですが、萎凋が十分ですと、発酵プロセスが要らない場合もあります。
その際は、まるで中国茶のような香りになります。
製茶をちゃんと仕上げることで、萎凋だけでもファンのつく確かなお茶に仕上がるのです。
一部の人は、やぶきたはアミノ酸の保持割合の高さから、下手に発酵させるくらいなら白・黄・青茶を目指すべきといいます。
製造法が、紅茶とはまるで別物になりますが、客からすれば『紅茶と同じように熱湯で淹れられる薫り高くておいしい茶』であるなら、問題はありません。

製造者の中には『発酵は深ければ深ければいい』と思う人もいます。
ですが、国産紅茶が消滅する前、この『発酵しすぎ』にしないように細心の注意を払っていたという記述も見受けられました。
この考え方が、一時期の消滅以降なくなったようで、きつく発酵した国産紅茶が圧倒的多数を占めてしまってます。
どれだけ安い海外の紅茶でも、あのような焦げ臭さを持った紅茶はほぼありません。
ただ、発酵はシーズンによってベストポジションが違うようですので、製品用に作る前に複数作って出来を確認する必要があります。
そうすることによって、顧客がファンとなっていつまでも買い続けてくれる嗜好品になりえます。

最後に

やぶきたでもおいしい紅茶を作ってくれる茶園さんはあります。
ただ、話を聞く限りでは、必ず海外の紅茶を知っていて、目標とするお茶を定めて、そこから少し違う独自のものを作り出そうとしています。
やぶきたは、紅茶にするには大変難しい品種です。
ですが、日本のお茶の7割はやぶきたです。
そして、今それで作っていた煎茶では生活ができない人が多く出て来ました。
高齢化による廃業で、茶園が放置されています。
茶業界の危機に突入しています。
その中で、今まで通りの事をしては駄目だという危機感はわかりますが、商品を作る以上、検証を重ね、『自分が売る相手が知ってる水準』に自分の商品を乗せるのは最低条件です。
紅茶に関しては、ティーバッグでさえ、それなりに味を出してきて、それに匹敵する紅茶以外は作っても時間がたてば自動的に排除されてしまうでしょう。
ですが、やぶきたは白・黄・青茶に希望が持てるという人が多くいます。
これらのお茶は、茶葉で一般的に飲まれておらず、多くてペットボトルです。
僕個人としての感想は、2013年5月現在で最もいい香り味を出しているのは、セブンイレブンのウーロン茶です。
それ以上のものを作り出して安定して提供できれば、無理に紅茶を作らなくても恒常的に売れる製品は提供し続けられます。
そして、緑茶飲料の大手は釜炒り茶をイメージして製品開発をしているという話も聞きます。
『甘いお茶』ではなく、『すっきり香ばしいお茶』や『かぐわしいお茶』も開発することにより、無理なく今の設備のままでもお客に愛される商品を作れるのではないかと思います。

茶業界は終わる産業ではありません。
次へのステップをする産業だと思います。
この革新を起こすのは、まぎれもなく今お茶を作っている人々ではないでしょうか。
未来はこれからです。

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